○神代よりその名は今も橘や 小戸の渡りの舟の行く末
○とぼけたる御顔におはす石仏 ほのぼの温き春の日に濡れ
○飛ぶ鳥にいざこと問はん行く水の
たえぬ逢瀬はありやなしやと
○岩の上に馬より落ちて腰ひざを 築波の川にぬるる袖かな
○うす霧のたえまを見れば秋風の 残る梢や青島の松
○今日ぞ見る稲荷の山の紅葉の 青かりし色は松の村立
○夢の夜を頼むもはかな星あいの 一夜の程の契りなりせば
○月やありぬ春や昔の春ならん 我が身一つはもとの身にして
○哀れとは思ふや祖母の懐を 葺不合の神風の声
○愚かなる身をし哀れむ心こそ 世に大君の慈しみなれ
○里人に問わずばいざや白波の 玉依姫の宮の浦とは
(歌語り風土記より)
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